昭和29(1954)年発売の「折り紙と切り紙」は64ページの薄い書籍ですが、
ここに"附録"として掲載されている藤城先生の作品は、
"附録"どころかすごい意欲作!
まずは、2ページのみですが「影絵の作り方」の紹介。
これは最初の「影絵の作り方」である昭和26(1951)年の週刊朝日に次ぐ古いもので、
資料的価値はもちろんのこと、
そこに載せられた影絵は今に伝えられていない貴重な作品です。
しかも続いて紹介されている6点も、すべて今回初めて目にするものばかり(@_@)
それぞれに詩昨が添えられていますので、どうか拡大してご覧になってみて下さい。
新発見の7点を個別に見てみましょう。
「おうちをたてよう」は、木を切る珍しい絵柄。
木を自然の象徴として描くことの多い先生の作風からすれば、意表を突く作品ですが、
タイトルを見れば納得です(^_^)v
「おうちをたてよう」のような、水辺に立つ一本の木という絵柄では、
1968年の「三田評論」の表紙絵や、
1960年出版の初の画集「影絵」の装丁画、
そして代表作の1つ「月光の響」、
また密かにファンの多い「走馬灯」などがあります。
(僕もその一人です♪)
「そらのおんがく」には驚きました!
もうほかにはないと思っていた「空とぶこびと」のバリエーションが、
もう1点あったのですから(@_@)
「空とぶこびと」は昭和28(1953)年の朝日新聞に掲載されていたので、
「そらのおんがく」は、その直後の作品ということになります。
詳細については先月の「『傘』の作品あれこれ<3>」でご紹介したばかりなので、
ここでは詳しくは書きませんが、
上の第1作目と下の2作とは少しずつ異なっており、
1作ごとに薄紙を重ねるように完成度が高められています。
その上、実写版までも!
「ほうきのそり」にも、実は驚かされました。
明らかにモチーフは冬、またはクリスマスなのに、
こびと達が乗っているのは、なんと「ほうき」(@_@)
魔法使いのイメージが含まれているのかもしれません。
でもそれが不自然に見えないのが、藤城先生のマジックです(^_^)v
こちらは「ほうきのそり」から丁度60年後に作られた「走れこびとサンタとニャー」。
タイトルが最高にかわいいです♡
共通したモチーフの作品として、
「トナカイとサンタボーイが行く」や、
「夜空の天使とサンタクロース」などが、
その60年の間に作られました。
「いたずらこねずみ」は、
ねずみ達はもちろんのこと、木馬も実にキュート♪
"回転木馬"ではない"単独の木馬"の作品は意外に少なく、
見つかったのは今のところ「森の中の木馬」と、
「星空の木馬の夢」のみ。
けれどいずれもファンタジーに充ちて、見る者の心をつかんで離しません(*^_^*)
ちなみに、単独タイプの木馬にはこんな実物も存在します。
これが木馬座の着ぐるみ劇や影絵劇で使われたものなのか、
はたまた先生が幼い頃に遊んだ思い出の品なのか、
その来歴はまったく不明なのですが、
いずれにしても、非常に大切にされていることだけは間違いありません。
(現在は、藤城清治美術館2階に展示されているはずです)
主役が後になってしまいましたが、
ねずみが登場する機会はとても多く、さまざまな作品に描かれています。
それもそのはず、藤城先生は1924年生まれの子年(^_-)-☆
ここでは結婚式のプレゼントなどによく使われるという「ねずみの吉夢」と、
同じく人気作品、「ねずみの海賊船」を挙げておきます(^_^)
なお、あまりご紹介したことはありませんが、
2008年にご無理を申し上げて描いていただいた、ねずみ海賊の一員もいたりします♪
「うみのなか」。
水底(みなそこ)に繰り広げられるメルヘンの世界です♪
亀を見ると浦島太郎を想像しますが、先生がこれを描いたのは1951年。
「うみのなか」はその3年後に作られたものでした。
紙をくり抜いて甲羅を描く手法が、共通していますね。
その後も「浦島太郎」は何度か描かれていて、
例えば1960年発売の「KODAMA童話集 第1集」。
「うみのなか」からわずか6年で、その画風は驚くほどの変貌を遂げています(@_@)
時代はうんと下がって1989年ともなると、
亀の上には猫が乗ってたりします(^o^)
ちょっぴり海賊風!?
仙台の笹かま館に展示されているうちの1点です。
一方、カニといえば、何と言っても「やまなし」。
先生が愛して止まない宮沢賢治の一作で、
その最初の作品がこちら。
昭和33(1958)年の朝日新聞に掲載されたました。
タイトルこそは「雨期」ですが、
画集「影絵」には、ご本人の解説で「やまなし」がモチーフだったと記されています。
笹かま館にある大作「2300匹 鐘が鳴り響く祈り」にも、カニが登場。
カラフルで愛らしい姿がたまりません(*^_^*)
大作の全容です。
幅15m!
カニたちは一番左の区画にいます。
「フライパンのおふね」にもルーツがあり、
それが「ヤカンのおふね」。
やはり昭和28(1953)年の朝日新聞に載ったものです。
この作品も細かな部分が変更され、
バリエーションが増え、
その後、「こびとの旅立ち」にたどり着くのですが、
実はこれにも別バージョンが存在していて、
全体の色調のほか、浮かんでいる水玉の数や、
傘の上に乗っているこびとの位置が異なっていたりと、
妥協しない先生の創意工夫の跡を見て取ることができます(^_^)v
最後は「ふねのうた」。
日の出の海に漕ぎ出す「こびとの旅立ち」とは対照的に、夜の海への船出です。
このモチーフは後にこびとから少女に取って代わられ、
よりロマンチックな情景へと変化して行きます。
それが1965年に作られた「夢の少女」で、
この作品はさらに「天の川」となり、
バスタブという、驚愕のグッズ(とはもはや言えない?)になりました!!
こればかりは、コレクション不可能です(^^;)
(バスタブの絵柄は3種類、しかもそれぞれに大中小のサイズあり)
1977年出版の「藤城清治影絵画集」には、
「夢の少女」に藤城先生が添えた詩が載っています。
これはきっと、「天の川」にも共通するイメージなのでしょう☆彡
・・・今回は忘れ去られていた7点もの作品と出会うことができ、
望外の喜びでした(*^_^*)
藤城先生がこれまでに制作された作品はおよそ3万点。
きっと埋もれたままになっているものが、まだまだたくさんあることでしょう。
もちろんコンプリートすることはできないにしても、
これからも可能な限り、眠っている作品を見つけ出したいと思っています♪♪♪
◆関連記事
:週刊朝日「影絵の作り方」
:「影絵の作り方」について
:三田評論(2)
:朝日新聞日曜版<1>
:わたしのベスト10
:「傘」の作品あれこれ<3>(9画像追加)
:クリスマス in 那須♪ <1>
:クリスマス作品集(東京出張報告その5)
:木馬づくし その2
:木馬づくし その4
:影絵と立体のコラボを探して
:第2回 納涼花火大会 by 影絵(3画像追加)
:教文館 訪問記<1>(エントランス~初期作品)
:4月17日教文館の画像をいただきました♪
:続・前祝いのお酒づくし^o^/
:「ねずみの海賊船」制作風景 その3
:ねずみの海賊船
:宮沢賢治特集(4) ~「セロ弾きのゴーシュ」によせて~
:三田評論(1)
:笹かま館 「メルヘンサロン」(1)
:笹かま館 「メルヘンサロン」(2)
:笹かま館 「メルヘンサロン」(3)
:朝日新聞日曜版<2>
:バスタブのバリエーション(追記3件あり)