先日来ご紹介しているこの鏡は、
縁取り部分が斜めになっていて、
中央の平らな部分はやや盛り上がった形のものだと判りました。
このような鏡を「面取り鏡」、斜めの部分を「面取り部分」というそうです。
断面図にすると、こんな感じ。
面取り部分が斜めなので、中央の部分が盛り上がって台形のような形をしています。
藤城先生の作品では、
2人目の姿の一部が、この鏡の面取り部分に映り込んでいるわけです。
(面取り部分は幅が狭いので、全身像は映りません)
でもどうして、
この面取り部分に2人目が映り込んで見えるのでしょう?
面取りされて斜めになった面に当たる光は、
鏡の中央に向かっては反射せず、外側に向かうはずなのに!?
再びこれは、面取り鏡の断面図です。
一般的に鏡は、ガラスに銀色の反射材を塗って光が反射するようにしてある訳ですが、
調べてみると、塗ってあるのは表面部分ではなく、いわば一番奥の"底"の部分。
面取り部分を含む表面そのものは、透き通ったままなのだそうです。
ここで、中学生のときに習った理科のおさらい。
「光の屈折」についてです。
むつかしいお話ではないので、どうかお付き合いください(^^;)
①
光は、空気中から水やガラスの中に入るとき、
その角度が垂直であれば、屈折することなく直進します。
(図の水色部分が、水やガラスです)
②
鏡に当たった光は、当たったときと同じ角度で反射します。
③
光が水やガラスから空気中へ出るとき、
水やガラスと空気の間にある、境い目(境界面)の方に曲がります。
水と空気との境い目での、光の屈折についての動画です。
①や③の説明として、上の画像より分かりやすいかもしれません。
なお、水の中から空気中へと進む光が、境界面で完全に反射する場面もありますが、
この現象は今回のお話とは直接関係がないので無視しておいてください。
これら①~③の法則を作品に当てはめてみると、
鏡の面取り部分に当たった光は、
なんと鏡の中央部分に向かって反射するんです(@_@)
上の図の面取り部分を拡大してみました。
①透き通っている面取り部分に垂直に当たった光は直進し、
②奥の反射材を塗ってある部分では、当たったときと同じ角度で反射、
③空気との境い目に斜めに当たった際にその境界面側に曲がって、外へ出て行きます。
・・・面取り部分に当たった光が鏡の中央に向かうことはない筈、という僕の勘違いは、
「反射は面取り部分の"表面"で起きる」という思い込みが原因だったのです(>_<)
※
なお①の光が垂直に当たるという設定は、話をシンプルにするためのもので、
光がこの図のもっと右の方から面取り部分に当たったとしても、同じ結果になります。
(でもこの図のもっと左の方から当たる光は、鏡の中央ではなく外側へ向かいます。)
ちなみに角度を変えて作品を見たときに現れる3人目も、同じ理屈。
光の反射が起きている場所が、
鏡の"横"の面取り部分の像か、"上"の面取り部分の像かという違いだけです。
・・・およそアートは作意と偶然の絶妙なバランスの上に成り立っていますが、
今回の作品はまさしくその典型♪
藤城先生のあくなき探求心とずば抜けたセンスの成せる業にほかなりません(*^_^*)
この作品を知ってからというもの、ず~っともやもやしていたのですが、
ようやく、それなりの説明が付くようになりました。
これでやっと枕を高くして眠れそう(^_^;)v
末筆ながら、
面取り鏡画像の一部は、総小判さんからいただきました。
いつも本当にどうもありがとうございますm(_ _)m
◆光の屈折
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