藤城先生の作品には、詩が添えられているものが何点かあります。
(それぞれの画像の右下をクリックすると、拡大できます)
中でもこれらの影絵には先生ご自身作の詩が書かれていて貴重なもの♪
でも原画のある施設に飾られているうえに、画集などではあまり紹介されないため、
ご存知の方は少ないのではないでしょうか。
「こびとの楽園」
画集などでよく見かける作品ですが、
原画は愛知県の介護老人保健施設「かなやまに」飾られています。
先生の詩は七五調や五七調で書かれていて、リズミカル♪
こびとの軽やかな動きが目に浮かぶようなタッチです(^_^)
「生命賛歌」
同じく愛知県の介護老人保健施設「あんず」に収められています。
詩は朗々として、いかにも作品にふさわしいスケールの大きなもの。
「生命讃歌」は自然讃歌でもあるんですね。
「流響」
今年の藤城清治事務所カレンダーでは「六文銭の夢」として紹介されていますが、
原題は「流響」。
長野県の上田駅待合室で見ることができます。
詩は真田幸村の時代に想いを馳せながらも、
自然の美しさを歌い上げる内容。
「生命讃歌」同様にスケールの大きなものですが、
「生命讃歌」が空間の広がりを感じさせるのに対して、
「流響」は遥かな時の流れを感じさせます。
ここからの4編の詩は、藤城先生の作品にほかの方が寄せたものです。
いずれも昭和28(1953)年の朝日新聞に掲載されました。
今回は何度もご紹介したものは避け、
あまりお見せしていないものの中から印象的な詩を選んでみました(^_^)
ちなみに、「こびとの楽園」に先生が書いた七五調・五七調の文体は、
この頃の作風を懐かしんで書いてあるのではないかと思います。
1月25日付け新聞より、「空とぶこびと」。
詩を書いた北畠八穂さんは、藤城先生の作品のために数多くの詩や童話を書いており、
最初のこびとが登場する「日の出の踊り」などでも影絵に詩を寄せているうえ、
「トンチキプー」では、逆に彼女の書いた物語に先生が挿絵を添えています。
「海のオルゴール」は、4月19日の紙面に載りました。
どこか「海に落ちたピアノ」にも似た雰囲気で、
詩と影絵が響き合って幻想的な世界が広がります。
11月15日に発表された「かぞえうた」。
詩の中で蒸気機関車は夜汽車として描かれていますが、
僕はどうしても「銀河鉄道の夜」を思い出してしまいます。
なお、いくつもの作品に登場する蒸気機関車のうちでも、こちらは最古参。
もしかすると最初の1枚かもしれません。
5月3日の紙面を飾った作品。
残念ながら画像が鮮明ではありませんが、いかにも先生らしい夢のような絵柄です。
叙情的な詩文とあいまって、
夜明け前の星空への、美しい思いが広がります。
朝日新聞以外では、「大きな約束」にも影絵に詩が添えられていて、
作者はあの谷川俊太郎!
どういう経緯で実現したのかは不明ですが、超大物同士の夢のコラボです。
一方、大物の詩人の作品に先生が影絵を描いた例としては、
宮沢賢治の詩があります。
昔の「中学一年コース」に載ったもので、藤城先生の知られざる賢治作品です。
原画は、たぶんもう存在しないかも?(涙)
最後は再び先生ご自身の詩が添えられた作品。
「三田病院から見た東京タワーから富士山の風景」です。
これは入院中の先生が病室から見える光景を描いたもので、
パノラマのスケッチに水彩で色付けされた、一見なんの変哲もない風景画です。
けれどそこに込められた思いには、鬼気迫るものがあります。
この一文は厳密には詩ではありません。
が、読む者の心を激しく揺さぶるという意味で、まさに詩文そのもの。
逆境ゆえになおいっそう「生きるよろこび」を得ようとして闘う先生の、
気骨と気概、そして気迫を感じずにはいられません。
・・・影絵と詩。
この2つを結びつけるものは、藤城先生の"詩心"以外のなにものでもないでしょう。
先生の詩心が詩人をうたわせ、詩人の詩が先生をうたわせ、
そして先生の作品を先生自身がうたう。
夢もメルヘンも心象風景も、すべては先生の詩心から生まれ出ているんですね。
そんな当たり前の事実に今頃になって気付かされました。
今回、これまで以上に先生の奥深さに触れることができたのは、
自分にとってとても大きな成果です。
でもそれも、藤城先生という宇宙の中の、ほんの一部に過ぎないのですが(^_^)
なお末筆ながら、
「こびとの楽園」の影絵と詩、「生命賛歌」の詩の画像は、
熱烈なファンの方からいただきました。
いつも本当にどうもありがとうございますm(_ _)m
◆過去記事
:かなやま と あんず
:鶴ヶ城プロジェクションマッピングと「こびとたちの楽園」
:JR上田駅 壁画「流響」
:お城めぐり(鶴ヶ城プロジェクションマッピングにちなんで)
:朝日新聞日曜版<1>
:朝日新聞日曜版<2>
:朝日新聞日曜版<3>(猫の特集)
:絵本「トンチキプー」 その1
:絵本「トンチキプー」 その2
:SLのある風景(前篇)
:SLのある風景(中篇)
:SLのある風景(後篇)
:SLのある風景(追加篇)
:SLのある風景(追加篇2)
:「大きな約束」
:宮沢賢治特集(4) ~「セロ弾きのゴーシュ」によせて~
:教文館展、初日<前篇>